NADAR (French, 1820-1910) “Baron Isidore Tayler” c. 1865 Woodburytype
今日の”LOOKING AT PHOTOGRAPHS”からの紹介は、NADARによる肖像写真です。
NADARは、風刺画家、ジャーナリスト、小説家、気球乗りといった多方面でも活躍した偉大な肖像写真家でした。また、ナポレオン3世時代のパリにおいて、多くの知識人、文化人の友人でもあり、彼らから多くのことを吸収しました。
このBaron Taylerの肖像写真において、彼はその写真のもつありのままを写し出す性質でもって、著しく不機嫌な表情を撮影しました。NADARは、写真の忠実さは良くもあり悪くもあることをよく理解していました。そんな理由もあり、彼は女性のポートレートを撮ることを好みませんでした。モデルが極めて美しいときですら、女性を喜ばすには、写真が写す結果は正直すぎると考えたのです。
この写真で用いられているWoodburytypeという手法は版画にも似た手法で美しいグレートーンを作り出すことが出来ました。残念なことに19世紀の後半にこの手法は途絶えてしまっています。
今日の写真を見ても、彼の肖像写真はまさにその対象者の性質を「忠実」に描き出す素晴らしいものであったように思われます。
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